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多文化共生社会とは?日本での実現は?



初めまして ! CORUNUM国際交流会チームの入江です。


まだまだ暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。

皆さんは今年の夏、どこかへ旅行しましたか?

国内では、きっとどこへ行っても外国人観光客を見かけたことと思います。


日本では近年、急激に国際化が進んでいます。

今回のブログでは、「多文化共生社会」をテーマに取り上げ、現在行われている取り組みや課題についてお話していきたいと思います。



多文化共生社会



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1.多文化共生社会の定義・背景



「『共生』とは、未来に向けて目指すべき理想ではなく、我々が既に直面している現実である。」


これは、私が授業内で聞いた大学の教授の言葉です。

社会学部である私はもともと多文化社会に関心を持っていましたが、共生をテーマとしたこの授業を受けたことで、多文化共生はこれまで以上に現実味と当事者意識を持って向き合うべき問題であると感じるようになりました。



総務省による多文化共生の定義は以下の通りです。


「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと。」



このような考え方が初めに生まれたきっかけは、主に第二次世界大戦後に発生した大規模な人口移動にあるといえます。


欧米では「ゲストワーカー制度」という、労働力としての外国人の一時的な滞在を認め、契約が満了すれば自国へ帰ってもらうという制度が積極的に導入されました。しかしゲストワーカーとして採用された人々は、結婚したり、生まれた子供が市民権を得たりすることによって、次第に社会に定着していきました。こうして、政府の意図しないうちに多文化社会が形成されていったのです。


さらに、冷戦の終結に伴い経済のグローバル化が進むと、国家間の経済格差が拡大します。これにより、貧しい国から豊かな国へ人口が移動するという構造が生まれました。


このようにして、多くの国が多様な移民を包含するようになり、多文化共生が求められていくようになったのです。


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2.多文化共生社会がもたらすもの


ここでは、多文化共生が社会をどのように変えてきたか、どんな影響を与えたかについて具体例を挙げて説明したいと思います。


〇アイデンティティの変容(オーストラリア)


オーストリアではかつて白豪主義と呼ばれる白人以外の入国を禁止する政策が採られていました。

この政策は、第二次世界大戦後には国際社会から強い非難を受けました。

さらに労働力不足にも追われたオーストラリア政府は方針を大きく転換し、多文化主義を掲げて積極的に移民の受け入れをするようになりました。

こうしてオーストラリアという国家・国民のアイデンティティは、

「白いオーストラリア」から「マルチ・カルチュアリズム(多文化主義)・オーストラリア」へと変容したのです。


〇過去の行為に対する反省(イギリス)


イギリスの植民地の一つであったオーストラリアでは、先住民であったアボリジニの人々が土地を奪われ、その後も長い間人種差別的な政策が採られていました。

しかし、1992年の「マボ」判決では、イギリスが植民地化する以前のオーストラリア大陸には土地所有者がいなかったという従来の考えが否定されました。

この判決をきっかけに、アボリジニに対する補償が行われました。

多文化共生を認めるということは、国家レベルで過去の不正義を問題化し、認識を改めることにもつながっています。


このように、多文化共生は国家や国民のアイデンティティを変化させたり、歴史を遡って国家としての認識を改めたりするという事例があり、社会に大きな影響を与えることが分かります。


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3.日本の多文化共生


〇日本の現状


まず、日本の多文化社会の実態についてデータで見ていきましょう。

令和5年6月末の日本の在留外国人数は約322万人で、過去最高を更新しました。これは、日本の人口の約2%を占めています。

下のグラフからも見て取れるように、コロナ禍での減少はあるものの在留外国人の数は概ね年々増加しています。



在留外国人数の推移

次に、国籍・地域別の在留外国人の構成比を表したグラフです。


国籍・地域別 在留外国人の構成比

このグラフから、在留外国人の内訳としては中国人が最大、次いでベトナム人、韓国人と並んでいますが、七割以上がアジアの国です。


また、在留資格別でみると以下のようになります。


在留資格別 在留外国人の構成比


(すべて出入国在留管理庁の公表資料より)


永住者に次いで多くの割合を占めている「技能実習」とは、外国人が日本の企業や事業主と契約を結び、出身国では習得が困難な技術等の習得・習熟を図る制度です。


また、全体の約5%を占める「特定技能」とは、国内で人材を確保することが困難な産業分野において一定の技能や専門性を持つ外国人を受け入れる制度です。


日本では少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化しつつあり、外国人労働者の受け入れに前向きな姿勢を示していると考えられます。



〇多文化共生のための政策


総務省は2020年に「地域における多文化共生推進プラン」の改訂版を公表しました。

ここでは、コミュニケーション支援生活支援意識啓発と社会参画支援地域活性化の推進・グローバル化への対応を四つの柱として掲げ、多文化共生についてより包括的な方針を打ち出しました。



1.言語面での取り組み


コミュニケーションにおいて、言語の壁を取り払うことは不可欠です。日本国内では、オンライン・オフラインに関係なく多言語に対応した環境整備が進められています。

身近な例では、道路標識の一部に英語が用いられていたり、ウェブサイトに多言語サービスが取り入れられたりしています。


しかし、外国人居住者の多国籍化が進む中で、すべての言語に対応するのはかなり困難な状況です。


そこで、新たな対策として「やさしい日本語」が広まりつつあります。やさしい日本語とは、文法・言葉のレベルや文章の長さに配慮し、わかりやすくした日本語のことを指します。


(例) 土足厳禁 → 靴を脱いでください。



2.生活面での取り組み


日本とは異なるバックグラウンドを持つ外国人が地域の一員として生活できるように、様々な支援が行われています。


例えば外国人にも公営住宅への入居が認められたり、外国人の子供に向けて多言語による就学情報が提供されていたりしています。


また、日本は災害大国です。そこで、緊急時の災害情報伝達の多言語化や防災訓練への外国人の参加などが行われています。


実際に鹿児島県鹿児島市では、2014年から「桜島火山爆発総合防災訓練」に外国人住民が参加しています。



〇日本における多文化共生の課題


1.外国人住民への差別


生活と仕事の両方においても、外国人が差別的な対応や発言を受けたというケースは多くあります。


平成28年度に総務省が行った調査によると、外国人であることを理由に

・入居を断られたことがあるという人の割合が約40%

・就職を断られたことがあるという人の割合が約25%

・侮辱されるなど差別的なことを言われたことがあるという人の割合が約30%

という結果でした。これは、かなり多い数字ではないでしょうか。


特に韓国人や中国人などに対するヘイトスピーチはしばしば問題となり、ヘイトスピーチ規制法も整備されています。


このような差別的な言動の背景には何があるのでしょうか。

ここには、ナショナリティ(国民性)との関わりが存在すると考えられます。

人種差別を行う人は、「自分がその国のマジョリティであり、マイノリティ(外国人)を管理・支配できる立場である」と信じている、すなわちその国は自分たちのものであると考えているといいます。


ナショナリティとは本来、愛国心や国民同士の連帯を促すため、それ自体は否定的なものではありません。


自らの中に「ここは自分たちの場所である」という意識がないか、考え直してみることが重要です。


2.制度面での問題


日本は様々な形で外国人の受け入れをしていますが、制度的に不十分と考えられる点もいくつかあります。


例えば、永住権を獲得していない在留外国人は生活保護を受けることが出来ません。加えて、日本国籍を持たない在留外国人は、納税義務があるにもかかわらず選挙権を持ちません。

このような状況は、義務と権利のバランスが取れていないとの指摘があります。


また、日本は「難民鎖国」と呼ばれることもあるほど、難民の受け入れに対してはかなり消極的です。日本の難民認定率は約2%で、これはG7の中でも極めて低い数値です。


これらを鑑みると、海外には日本は依然として閉鎖的な国家というイメージを与えているのかもしれません。


多文化共生社会


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4.まとめ・CORUMUNの活動


〇多文化共生には市民の参加が不可欠


先程もお話ししたように、政府や自治体の取り組みだけでは多文化共生社会の実現は不可能です。

わたしたち市民一人ひとりが共同して作り上げていく必要があります。

これは多文化共生だけに留まりませんが、相手と完全に分かり合う必要はなく、ただ相手の立場になって想像してみることが大切なのではないでしょうか。

自分がマジョリティにもマイノリティにも、被害者にも加害者にもなりうることを想定して生きていきたいと筆者個人は思っています。


〇CORUNUMの活動「アートを通じて多文化共生社会を」


わたしたち、学生団体CORUNUMは「アートを通じた共生社会の実現へ」を基本理念としています。


これに基づいて、「マイノリティ×アート」「アルバイト×療育現場」「日本の施設×海外大学」など、言語の壁を超えるアートを用いて幅広い視点から活動をしています。


今回の多文化共生社会に関連して、私が所属している国際交流会ではこれまで留学生と一緒に英語でパン作りをするなど、ともに楽しめるような活動を行っています。


こちらは宣伝になりますが、10月6日(日)にもグローバルビレッジ有楽町にて国際交流イベントを行います!留学生の方の名前に漢字を当ててみたり、折り紙を使ってチャームを作ったりする予定です。


是非皆さんに来ていただきたいので、興味のある方は以下のQRコードから連絡してください!


国際交流イベントの詳細



長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。




また、CORUNUMに多世代交流会を開催してほしい施設様・企業様を募集しています!

もし希望される場合は以下のお問合せページよりお問い合わせください!





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参考文献


総務省「多文化共生事例集 2017」


出入国在留管理庁「令和5年6月末現在における在留外国人数について」


東京都多文化共生ポータルサイト「『やさしい日本語とは』」


ジチタイワークスWEB「多文化共生とは?実現のための様々な支援や自治体の施策をご紹介」


総務省委託調査研究事業「外国人住民調査報告書- 訂正版 -」


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